【魚トリビアの海5】フグ毒「 テトロドトキシン 」の作用メカニズムとは?(簡易ver)
テトロドトキシンについて
まずはテトロドトキシンについて簡単にご説明します!
テトロドトキシンはアルカロイド系の毒物質です。
アルカロイドとは、窒素を含む特殊な塩基性成分の総称であり、少量で動物に対して強い生理作用を持つ物質のことを言います。
例としてニコチンやコカインなどが挙げられます。
致死量はお米1粒以下!?
実際に、ヒトに対するテトロドトキシンの致死量はたった1~2 mgであるとされています。
1~2 mgとは、炊く前のお米1粒が20mgなので、お米1粒をさらに20分の1したぐらいの量であると思ってください。
もはや粉ですね笑
ちなみに、フグの代表格であるトラフグにはヒト10人分の致死量に匹敵するテトロドトキシンが含まれているようです😱
このテトロドトキシンは酸に強く、加熱しても不活性化されないため、加熱調理でも除去することはできません。
ゆえに肝臓や卵巣などの有毒部位を適切に取り除く必要があります。
これには十分な技術が必要であることに加えて、有毒部位はフグによって異なり、十分な知識が要求されるため、フグを捌くためにはその技術や知識を十分に持つことを証明する免許が必要となっています。
解毒剤は存在する?
また、解毒剤も現在のところ開発されていないため、誤って摂取してしまったとしても確実な治療法を受けることができません…
一応治療法はあるようなのですが、その内容はなんと「胃洗浄や排尿促進を行い、体から自然に排出されるのを人工呼吸器等で呼吸を補いながらただただ待つ」という何とも古典的な方法となっています。
早く解毒剤ができて欲しいものですね。
フグはどのようにしてテトロドトキシンを獲得するのか?
実はこのテトロドトキシンはフグ自身が体内で生成しているわけではありません。
まず、「テトロドトキシン生成するバクテリア」が存在し、「貝やヒトデ」などがその「バクテリア」をエサとして食べます。
次に、その「貝やヒトデ」を「フグ」が食べることによって、「フグ」の体内にテトロドトキシンが蓄積されることになります。
この一連の流れを専門用語で「生物濃縮」と言います。
このことを踏まえると、フグにテトロドトキシンを含まないエサを与えれば毒を持たない安全なフグができるのではないか?と思いませんか?
実際にこの取り組みは行われているのですが、どうやら毒を持たないフグは不安定な状態となり、お互いにケンカをしあう割合が増えるようです。
フグは防衛のために毒を持っていることを考えると、防衛手段があるのとないのとでは精神的なストレスが異なるのは想像できますよね。
本能的な部分に関しては生物はみんな同じなのだな~と考えさせられます😄
ヒトがテトロドトキシンを摂取するとどうなる?
現れる症状は?
ヒトがテトロドトキシンを摂取した場合、食べて20分~3時間という短時間で症状が現れ始めます。
症状としては、口周りの軽いしびれから始まり、徐々に全身に広がっていき、次第に感覚・運動麻痺が起こります。
さらに進行すると呼吸中枢が麻痺して呼吸が停止し、最終的には心臓が停止して死に至ることとなります。
作用メカニズムについて
それでは、テトロドトキシンはどのような作用メカニズムでこれらの症状を引き起こすのでしょうか?
このメカニズムについて説明する前に、少し生物学的なお話をさせていただきます。
あ、そこまで気負わないで大丈夫ですよ笑
生物は、「視覚や触覚などの感覚情報を脳で受信する」「脳から運動命令を発信する」「筋肉を動かす」ために神経や筋肉において電気的な信号を使用しています。
この信号が伝達されるために必要なメカニズムの1つに、「ナトリウムイオン」という電気を帯びた物質が「ナトリウムチャネル」というナトリウムイオン専用の孔(トンネルのような構造を想像してください)に流入するというものがあります。
当然ながらもっと複雑なメカニズムなのですが、さらに詳しく説明すると頭がごちゃごちゃになると思うので、今回は上記した内容までを覚えておいてください。
この内容を踏まえて、テトロドトキシンの作用を見ていきましょう!
テトロドトキシンの作用は「神経や筋肉のナトリウムイオンチャネルを選択的に阻害すること」です。
(正しくは電位依存性ナトリウムイオンチャネルなのですが、細かいことは置いておきましょう笑)
これによって、ナトリウムイオンの流入が阻害される、つまり電気的な信号の伝達が阻害されます。
信号の伝達が阻害されるとどうなるかは、ここまで読んだ皆さまなら何となく想像つきますよね?
そうです!
「視覚や触覚などの感覚情報を脳で受信できない」「脳から運動命令を発信できない」「筋肉を動かせない」ことになります。
これらが原因で上記したような麻痺や呼吸停止などの症状が起こる、というのがテトロドトキシン中毒のメカニズムとなっています。
最後に
ここまでお読みいただきありがとうございました!
今回はフグ毒「テトロドトキシン」について、その作用メカニズムを中心にご説明しました。
なんとなく理解していただけましたでしょうか?
改めてフグ毒は怖いですね…😓
作用メカニズムを知ると、そりゃ誤ってフグの有毒部位を食べると死ぬわと思いますよね…笑
皆さまも絶対に素人が捌いたフグは食べないようにしましょう!
専門の店で食べたほうが安心かつ確実に美味しいですよ!!👍
最後になりますが、今回の内容は信頼できるサイト・書籍に基づいて執筆しましたが、私自身が専門家ではないため、不十分な部分や誤った内容を記載している部分があるかもしれません。
その点ご理解ください。
ご指摘がありましたら、連絡先を添付していますので教えていただけると幸いです。
私の勉強にもなりますので宜しくお願いいたします。
それではまた次回のブログでお会いしましょう!
お疲れさまでした~😄
参考文献:
魚の自然誌;ヘレン・スケールズ 著
けなげな魚図鑑;松浦 啓一 著
厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒
薬学用語解説 アルカロイド/テトロドトキシン
みんなの動物病気大百科 自然界にある毒物について (2)毒を持つ魚介類
堺市 ふぐの食中毒について
徳島県 危険です!フグの素人調理はやめましょう
2022.09.06 うぉーらる
当ブログにお越しいただきありがとうございます!
管理人のうぉーらるです。
今回は「魚トリビアの海」の第5回となります!
今回の内容は皆さまも良く知るフグ毒「テトロドトキシン」についてです。
この毒について、ほんの少量でも摂取すると死に至ることはよく知られていますが、その作用メカニズムについてまで知っている人は少ないのではないでしょうか?
私も認識があやふやな状態だったため、ネットで調べてみたところ、難しく書かれているものが多い印象でした。
そこで、私なりの簡単で分かりやすい解説を作ろう!ということで、この記事を作成することにしました👍
今回を機に一緒に勉強していきましょう!